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ベイズ推定と株式相場のファットテイルについて(2010/08/31からの続き) [金融]

最近の株式は好調ですね。11月半ばにTOPIX-ETFを850アラウンドで利食ってしまったので,やや複雑な心境です。これはひとえに,米国景気が案外と持ち直すのではないかという観測に加えて,米国金融当局が低金利政策で景気をしっかり支えてくれるとの見通しが優勢であることに尽きます。これは消費大国である米国の復活を期待させることでグローバルな株価にプラスであるのと,日本に関してはドル高に転じたことで輸出企業の収益性への不安が緩んだという,二つの意味合いがあります。

しかしながら,ワタクシは米国景気は二番底とインフレ懸念の二つの不安を抱えており,少なくともドル高はそう長続きしないのではないかと考えています。このため,TOPIX-ETFも追いかけて買おうという気にはなれないのですが,いまの地合いだと円高に振れても日本株はあまり痛まないかも知れないですね。こういうときは単にドルを売るのがいいのかも。。。

今日は2010/08/31からの続きについて↓

http://himakou.blog.so-net.ne.jp/2010-08-30前回は,株式相場のファットテイルの要因として,①何らかの要因でいったん大きな変化が起こると,これがきっかけで過去の値動きとの正相関が強まってしまうようなメカニズム,②何らかの要因でいったん大きな変化が起こると,これがきっかけで値動きのボラティリティが高まってしまうようなメカニズム,といったものを指摘しました。今回はこれをもう少し掘り下げてみます。

具体的には,こういう掘り下げ方をしてはどうでしょうか。すなわち,市場参加者は過去の経験や相場見通し等から「だいたいこれくらいのボラティリティだろう」という予測を持って相場に臨んでいますが,何らかの要因でいったん大きな変化が起こると「ボラティリティの見通しが間違っていたかも知れない」と考えるため,

・一時的に市場参加者が様子見となって相場が荒っぽくなる
・市場参加者の期待するリスクプレミアムが高まって株価が不連続に下落する

といった要因から,しばらくボラティリティの高い相場展開が続くという説明です。

もう少し掘り下げてみましょう。当初の相場の大きな変化は「たまたま」かも知れず,もしかしたら市場参加者の誰かによる誤発注のせいかも知れません。しかし,他の多くの市場参加者はなぜ大きく変化したのかがわからず,疑心暗鬼になるはずです。多くの市場参加者は相場に対して謙虚な姿勢を持っていますから,自分の相場見通しを修正することになるでしょう。これって何かに似ていると思いませんか?

ワタクシは「ベイズ推定」を思い出さずにいられません。「ベイズ推定」とは,例えば相場モデルの特性を特定するための諸定数(「パラメータ」という)を決める際に,当初は自分の主観に基づくパラメータを想定していたのが,観測データがだんだん増えるのに伴ってパラメータを補正していくような推定手法のことです。極めて大雑把にいうと,「ベイズ推定」とは主観的な見通しが実データ蓄積に伴って徐々に客観的な見通しに置き換わっていくタイプの推定手法といえます。

「ベイズ推定」では実データへの依存度が極めて高く,せっかくこれまでの実データ蓄積でいい感じにモデルパラメータの推定が固まってきたのに,上述したような「外れ値」が実データとして突然追加されると,「ベイズ推定」はパラメータに対する確信度を一気に引き下げることになります。すなわち,「ベイズ推定」には異常値を異常値として割り切るすべを持ちません。しかし,これは市場参加者も同じことです。誤発注による異常な相場変動を初期段階で看破できる市場参加者などいるわけありません。

こう考えてくると,相場とは市場参加者による「ベイズ推定」のプロセスそのものであるとは考えられないでしょうか? やや突飛なアイディアかも知れませんが,急激な相場変動によって市場参加者が相場見通しの修正を迫られることと,市場参加者が「ベイズ推定」を淡々と行うことはよく似ていると思います。

さて,株式市場の参加者が,収益率が単純な正規分布に従うような確率モデルを想定して「ベイズ推定」を行っていると考えた場合は,急激な相場変動によってパラメータに対する確信度を引き下げることになりますが,「ベイズ推定」的センスでは収益率が正規分布ではなくt分布に従うような確率モデルを想定して非ベイズ的な推定(パラメータの逐次修正を行わないタイプの推定)を行っているのと同じことではないでしょうか?

結論としては,モデルの普及度によって相場つきが変わってくること,相場に勝つには「ベイズ推定」的センスを取り入れた一歩先の定常モデルを採用すること,などですが,このあたり,是非多くの方々のご意見をいただきたいところです。終わり。
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