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「就活ルール」の廃止について [理数系思いつき]

経団連の中西会長が主導する形で、学生の採用時期を定めた「就活ルール」が廃止されることになった。

この話題に関しては、知り合いの子供さんが現在大学二年生、すなわち「就活ルール」廃止初年度にあたることもあり、身近な問題として捉えてきた。折しも本日(2018/10/10)、朝日新聞のオピニオン欄に三人の有識者の意見が載っていたことから、自分なりの見解を述べるもの。

三人の意見は、肯定派・否定派・特殊意見、に散らされている。表題を順に並べると「いわば『自由恋愛』の解禁」「長期化で学業おろそかに」「仕事探し大人になっても」となっており、いずれも読み応えのあるものだった。

まず、肯定派の仲暁子さんは30歳代半ばでありながら就活サイトのCEOということで、ある種のポジショントークの印象がないでもなかったが、主張する内容は極めて真っ当なものだと思った。「集団見合いから自由恋愛へ」という比喩が秀逸だったこともあるが、より説得力を感じたのは、短期間で一発勝負する現行の就職活動よりもインターンシップ等の長い付き合いを通じた相思相愛という形での就職が望ましいという主張。終身雇用はすでに崩壊しているとの前提。

次に、否定派の舟戸一治さんは明治大学の学生就職支援の責任者。「就活ルール」廃止によって学生の就職活動が長期化し、本業であるはずの学業に支障が生じるという、意外感のない主張が中心だったが、就職活動疲れによってベストな就職につながらないのではといった趣旨の主張は、多くの学生が一人も不幸にならないようにきちんと送り出す立場としてはやむを得ないのかもという気もした。

最後に、特殊意見の羽田圭介さんは30歳代前半の専業小説家で、大学時代に就活を行い1年半の社会人生活も経験しているとのこと。主張内容を勝手意訳すれば「『就活ルール』廃止には強い意見はなく、学生だろうと社会人だろうと常に問題意識を持ちつつ自分を高めようとすることが重要」というもので、まったくもってごもっとも。

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さて、ワタクシの意見だが、社会人生活30年に差し掛かり、それなりの人数の部下を抱える身としては、「総論」と「各論」の違いを避けて通れない。

これまでの歴史においてさまざまなルール変更・イデオロギー変更があったわけだが、人間はみな何らかの形でこうした変化を乗り越えてきた。相対的には「就活ルール」の変更など大した話ではなく、そんな変化に適応できない学生なんて社会で役に立つとも思えない、といった考えが肯定派の立場ではないかと想像する。ワタクシもこのことには大いに賛成。これは「総論」である。

しかし、学生の中には、優れた資質を有してはいるもののいわゆる「遅咲き」の者も一定数含まれているはずで、現行のような護送船団的な就職をした後、就職先の組織で成長して貢献するタイプを切り捨てる懸念がある。また、肯定派は概して転職を奨励しているが、過度な転職は成長の機会を得られず、社会レベルでみれば損失といえなくもない。これは学生の個性に着目した「各論」である。

こうした「総論」と「各論」の間を埋め合わせるのが企業インターンシップではないかというのが、ワタクシの最大の主張である。ワタクシの時代は企業インターンシップなどというものはなかったが、学生にとっても企業にとっても確かによい制度だという気がする。しかしながら、中小企業レベルでそこまで手当することは現実的ではなかろう。そこで、自社単独でインターンシップを手当できない中小企業については、複数企業が連合する形でインターンシップを手当するというアイディアが有効ではないか。

よく手当てされた企業インターンシップは、大学での講義よりもその後の人生において役立つことも十分考えられる。そもそもワタクシの時代は大学生は勉強しないものと相場が決まっていたが、最近の学生は比較的よく勉強しているとも聞く。ただし、彼らにとっては自分にとって有益な学習機会であれば、大学であろうが企業インターンシップであろうがこだわらないのではなかろうか。

そんなわけでワタクシとしては、「就活ルール」廃止を契機に各企業が単独または連合してインターンシップを競い合うことで採用活動を行う形へと誘導し、大学側は企業インターンシップへの参加を前提としつつ学生の就職活動を支援する、といった役割分担が望ましいように思われる。

ややテクニカルな話をすると、企業がインターンシップを充実させるとすれば、企業の採用コストが増大する理屈になるが、それを誰に転嫁すべきであるかは実に興味深い命題である。マクロでは国力増強に資するとの観点から国家(=税金)が負担する性質のものに思えるが、企業に直接補助金を出すのも芸がないし、バラマキにもつながりかねない。学生にバウチャーを配布して学生にインターンシップ先企業を選択させるのがよさそうに思えるし、インターンシップ料金の多寡で市場原理も働く期待もある。

全体的に悪くないアイディアではないかと思うが、読者の方のご意見も聞いてみたいです。おしまい。


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