飛行機はなぜ飛べるか(難しく考えない) [理数系思いつき]
こんにちは。今日は「飛行機はなぜ飛べるか」について自説を披露してみたいと思います。これを書こうと思い立った直接のきっかけは,たまたま見つけた
http://openblog.meblog.biz/article/83916.html
に触発されたためです。飛行機が飛ぶ原理については,そんなに難しく考えなくても理解できるはずだとワタクシは考えています。~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~
上のブログの結論はこういうものです。
「百トンもある重い飛行機がなぜ飛ぶのか?」という疑問には、次のように答えればいい。 「百トンの空気を下方に押し下げるから、その反作用で飛行機は浮き上がる」
上の説明の非凡なところは,よくある「揚力」の説明では明示的に表に出てこない「空気の質量」を意識し,飛行機と空気をトータルで捉えた場合の力学的な重心が不動であるべきだという基本的なニュートン力学の世界でもって,飛行機が飛ぶ理屈を説明しているところだと思います。これはこれで間違っていないと思います。(なお,力学的な重心が不動であることと,作用反作用の法則は単なる微分積分の関係にすぎず,同じことを言っています。)
しかしながら上の説明は,飛行機が空気から具体的にどういう力を受けているかについての説明を回避しているために,何となくだまされたような印象も残ります。これについては,ブログの別の箇所に
「本当は、翼のそばではなく、翼の後方の空気こそが重要だ。翼の後方で、空気がどれほど下方に押し下げられているか、ということこそが、揚力の源泉となる。そこをちゃんと計算することが必要だ。」
とあり,飛行機が空気から力を受ける箇所は主に翼の後端だと考えているようですが,風洞実験から得られる翼の空力中心(空気から受ける力のモーメント中心)は一般に翼のもっと前の方なので,これは明らかに事実に反します。
さて,飛行機が空気から受ける力について正面から受け止めつつ,もっと納得しやすい説明はないものでしょうか。ワタクシは,ある種の偏見から解き放たれることで実現されると思います。偏見とは何か,それは上のブログに図らずも書かれていたように,
百トンもある重い飛行機が・・・
というものです。「あんなに重たい鉄の塊がなんで空気みたいな軽いものによって持ち上げられるんだろうか?」というイメージが,問題をわかりづらくしています。ベルヌーイの定理やコアンダ効果を信じようが信じまいが,次の結論には全員同意するはずです。
翼の形状・サイズおよび表面の構造がまったく同じであれば,翼の質量が違っても空気から受ける力は同じである。
要は,翼の中身ががらんどうか詰まっているかは関係ないでしょ,ということです。だったら,始めから飛行機みたいな重いものでなく,もっと軽くて身近なものが空気から受ける力で浮き上がる例がないでしょうか。ありました。
凧はなぜ揚がるのか
いかがでしょうか。飛行機が飛ぶのが不思議に思われた方も,凧が揚がるのは不思議に感じないのではないでしょうか。凧揚げの経験があってもなくても,答えはこれ以外にないと思いませんか? ちっとも難しくない。
凧に風(=空気の流れ)が当たって持ち上げられるから。
~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~
本記事の伝えたいことは概ね言い尽くしたのですが,ここから先は凧が揚がる理屈をよりイメージするための説明を加えたいと思います。
上の絵は,等速で走る車から凧を揚げている様子です。凧も等速運動をしているので,凧に働く力は釣り合っているはずです。
凧に働く力は上のとおり,重力,糸の張力,それに空気から受ける力の三つです。凧は軽いので重力はほぼ無視でき,凧が空気から受ける力は糸にほぼ平行に働いていることがわかります。このように,凧が空気から受ける力は「斜め上向き」なわけですが,これを垂直方向と水平方向に分解し,前者を「揚力」,後者を「空気抵抗力」と呼んでいるだけのことです。
等速運動をする凧が空気から斜め上向きの力を受けるのは,凧の角度から考えて極めて常識的なことであり,不思議でも何でもないと思いますが,専門家がこれを「揚力」と「空気抵抗力」に分解してしまい,しかも「揚力」だけを取り出してベルヌーイの定理などと持ち上げてしまったために,一般人には本質が見えづらくなってしまった,たったそれだけのお話でした。
以上から,「百トンもある重い飛行機がなぜ飛ぶのか?」という疑問には、次のように答えればいい。
「凧が揚がるのと同様,空気から斜め上向きの力を受けるため。重い飛行機を支えるために,スピードを速くすることと,翼の形状を工夫することで,より大きな力が得られる。」
おしまい。
~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~
<補足>
凧が揚がる原理について。ワタクシは「雪かき」のイメージを持っています。気候温暖な地域で雪かきの経験がない方にはピンと来ないかも知れませんが・・・。
上の写真のような両手で押すタイプのスコップで雪かきを行う場合,雪がふわふわで軽い場合は特段問題ないんですが,降雪後に時間が経って雪が自分の重みで圧縮しているような場合は,雑にスコップを雪に差し込むとうまく掬えずに雪の表面を「上滑り」することがあります。(伝わりましたでしょうか,この感じ。)
このようにスコップが雪の表面を「上滑り」するのは,スコップの裏面で雪を押しつぶすことで雪の反発を受けたと捉えることもできますが,凧が空気から力を受けるのも,凧が自分の進行方向斜め下の空気を押しつぶすことで空気の反発を受けたと捉えることができます。(共感できましたでしょうか,このイメージ。)
以上のように考えると,飛んでいる翼の上面近辺よりも下面近辺の方が圧力が高いのは,ベルヌーイの定理を持ち出すまでもなく,常識として理解できます。おしまい。
http://openblog.meblog.biz/article/83916.html
に触発されたためです。飛行機が飛ぶ原理については,そんなに難しく考えなくても理解できるはずだとワタクシは考えています。~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~
上のブログの結論はこういうものです。
「百トンもある重い飛行機がなぜ飛ぶのか?」という疑問には、次のように答えればいい。 「百トンの空気を下方に押し下げるから、その反作用で飛行機は浮き上がる」
上の説明の非凡なところは,よくある「揚力」の説明では明示的に表に出てこない「空気の質量」を意識し,飛行機と空気をトータルで捉えた場合の力学的な重心が不動であるべきだという基本的なニュートン力学の世界でもって,飛行機が飛ぶ理屈を説明しているところだと思います。これはこれで間違っていないと思います。(なお,力学的な重心が不動であることと,作用反作用の法則は単なる微分積分の関係にすぎず,同じことを言っています。)
しかしながら上の説明は,飛行機が空気から具体的にどういう力を受けているかについての説明を回避しているために,何となくだまされたような印象も残ります。これについては,ブログの別の箇所に
「本当は、翼のそばではなく、翼の後方の空気こそが重要だ。翼の後方で、空気がどれほど下方に押し下げられているか、ということこそが、揚力の源泉となる。そこをちゃんと計算することが必要だ。」
とあり,飛行機が空気から力を受ける箇所は主に翼の後端だと考えているようですが,風洞実験から得られる翼の空力中心(空気から受ける力のモーメント中心)は一般に翼のもっと前の方なので,これは明らかに事実に反します。
さて,飛行機が空気から受ける力について正面から受け止めつつ,もっと納得しやすい説明はないものでしょうか。ワタクシは,ある種の偏見から解き放たれることで実現されると思います。偏見とは何か,それは上のブログに図らずも書かれていたように,
百トンもある重い飛行機が・・・
というものです。「あんなに重たい鉄の塊がなんで空気みたいな軽いものによって持ち上げられるんだろうか?」というイメージが,問題をわかりづらくしています。ベルヌーイの定理やコアンダ効果を信じようが信じまいが,次の結論には全員同意するはずです。
翼の形状・サイズおよび表面の構造がまったく同じであれば,翼の質量が違っても空気から受ける力は同じである。
要は,翼の中身ががらんどうか詰まっているかは関係ないでしょ,ということです。だったら,始めから飛行機みたいな重いものでなく,もっと軽くて身近なものが空気から受ける力で浮き上がる例がないでしょうか。ありました。
凧はなぜ揚がるのか
いかがでしょうか。飛行機が飛ぶのが不思議に思われた方も,凧が揚がるのは不思議に感じないのではないでしょうか。凧揚げの経験があってもなくても,答えはこれ以外にないと思いませんか? ちっとも難しくない。
凧に風(=空気の流れ)が当たって持ち上げられるから。
~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~
本記事の伝えたいことは概ね言い尽くしたのですが,ここから先は凧が揚がる理屈をよりイメージするための説明を加えたいと思います。
上の絵は,等速で走る車から凧を揚げている様子です。凧も等速運動をしているので,凧に働く力は釣り合っているはずです。
凧に働く力は上のとおり,重力,糸の張力,それに空気から受ける力の三つです。凧は軽いので重力はほぼ無視でき,凧が空気から受ける力は糸にほぼ平行に働いていることがわかります。このように,凧が空気から受ける力は「斜め上向き」なわけですが,これを垂直方向と水平方向に分解し,前者を「揚力」,後者を「空気抵抗力」と呼んでいるだけのことです。
等速運動をする凧が空気から斜め上向きの力を受けるのは,凧の角度から考えて極めて常識的なことであり,不思議でも何でもないと思いますが,専門家がこれを「揚力」と「空気抵抗力」に分解してしまい,しかも「揚力」だけを取り出してベルヌーイの定理などと持ち上げてしまったために,一般人には本質が見えづらくなってしまった,たったそれだけのお話でした。
以上から,「百トンもある重い飛行機がなぜ飛ぶのか?」という疑問には、次のように答えればいい。
「凧が揚がるのと同様,空気から斜め上向きの力を受けるため。重い飛行機を支えるために,スピードを速くすることと,翼の形状を工夫することで,より大きな力が得られる。」
おしまい。
~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~
<補足>
凧が揚がる原理について。ワタクシは「雪かき」のイメージを持っています。気候温暖な地域で雪かきの経験がない方にはピンと来ないかも知れませんが・・・。
上の写真のような両手で押すタイプのスコップで雪かきを行う場合,雪がふわふわで軽い場合は特段問題ないんですが,降雪後に時間が経って雪が自分の重みで圧縮しているような場合は,雑にスコップを雪に差し込むとうまく掬えずに雪の表面を「上滑り」することがあります。(伝わりましたでしょうか,この感じ。)
このようにスコップが雪の表面を「上滑り」するのは,スコップの裏面で雪を押しつぶすことで雪の反発を受けたと捉えることもできますが,凧が空気から力を受けるのも,凧が自分の進行方向斜め下の空気を押しつぶすことで空気の反発を受けたと捉えることができます。(共感できましたでしょうか,このイメージ。)
以上のように考えると,飛んでいる翼の上面近辺よりも下面近辺の方が圧力が高いのは,ベルヌーイの定理を持ち出すまでもなく,常識として理解できます。おしまい。
2014-01-29 16:09
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