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S&P社による米国債の格下げについて [金融]

最近の金融市場は悲観的な展開が続いていますね。中でも最近のキーワードは「国家財政危機」です。特に表題の http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-22575320110806 について。米国では,国家財政赤字への対応を巡る与野党対立から予算執行にも綱渡りの状況だったわけですが,先週後半にようやく妥協的な財政再建策が合意された状況です。こうした中,三大格付機関の一つであるS&P社は先週末に米国債の格付けをAAAからAA+へと格下げすることを決めました。

まあ何といっても,米国を本拠地とするS&P社が米国政府の強い抵抗にもかかわらずにこうした決定を行うというのは,直感的には健全な国だなという印象を持ちます。S&P社の立場に立って考えてみると,「ここで米国債を格下げしておかないと,米国債に限らず過去や将来の格付け決定に不整合をきたす恐れが高い」と思ったのがいちばん大きい理由ではないでしょうか。

もちろん,さまざまな政治力学の結果として決断に至った側面もあるでしょう。また,Moody's社とFitch社が格下げを見送った中で自分だけ格下げをメッセージした点に注目すれば,売名行為のニュアンスもあるかも知れません。しかし,ヒネクレモノのワタクシとしては今回はS&P社の肩を持ちたい。理由はニつです。

(1)実はAAAとAA+の違いは金融業界においては大した違いではありません。そもそも格付けとは債務のデフォルト(不履行)可能性を表すものですが,いずれの格付けも1年以内にデフォルトに至る可能性は統計的にゼロであり,いわゆる貸倒引当金の意味ではまず影響ありません。この意味で,いまこの程度の格下げカードを切っておくことはよいタイミングのように思えます。

(2)時期はともかくとして,米国は世界の盟主の座から必ず滑り落ちる日が来ます。かつての英国がそうなったように。。。40年前は1ドル360円でしたが,いまでは1ドル80円割れです。為替相場というとすぐ目先の5円10円に一喜一憂しがちですが,これが時代というものです。為替相場は格付機関と別に米国の行く末を見つめてきました。米国がAAA格でなくなっても驚くべきではありません。これを機会に世界中の金融機関はリスクシナリオの点検を行うべきでしょう。

まとめると,S&P社はやるべきことをやったし,危機管理の機会を提供してくれた意味でもワタクシは評価したい。おわり。
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