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実質GDPを拙速に高めようとしてはいけない(2013/01/26の続き) [金融]

こんばんは。アベノミクスについて,前々回は「景気浮揚のために積極的な金融緩和や財政政策を行うのはいいが,デフレ脱却を目標とするのは適切でない」という主張を展開し,さらに前回は「安定的な実質経済成長のためには,実質経済成長率を無理して高い水準に保とうとするのは逆効果である」という主張を展開しました。今回はこれをさらに深掘りしてみたいと思います。

前々回→http://himakou.blog.so-net.ne.jp/2013-01-25
前回→http://himakou.blog.so-net.ne.jp/2013-01-26確認しておくと,ワタクシの主張は次の二点です。

・名目GDPやインフレ率が上がっただけでは国民は景気浮揚の恩恵を得られない。両者の差である実質GDPをいかに高めていくかが重要であって,「脱デフレ」などという掛け声は実質GDPを高めるための障害になりかねない。

・実質GDPは国民が消費を我慢して投資に回すことの対価(=ご褒美)にあたるので,実質GDPが身の丈を超えて一時的にでも高くなってしまうと,国民が消費を我慢する傾向が高まり,持続的な経済成長につながらない。

上の二つは一見して二律背反的ですが,矛盾はしていないと思います。つまり,実質GDPを安定的に高めることが国民の幸福のためにはいちばんなわけですが,身の丈に合わない実質GDPの水準は持続可能ではないということです。

例えるならば,人間は興奮による快感が長い方が幸福ですが,そうした興奮は高血圧に耐えられる肉体があって初めて得られます。あらかじめ体を適応させておけばいいんですが,そうでないのに快感を追求しては早死にしてしまうでしょう。

それでは,実質GDPを安定的に高めるためには,何をどの順番で始めるべきでしょうか。いちばん始めは,リスクマネーの供給をとにかく増やすことだと思います。預貯金は家計セクターにも企業セクターにも積み上がっているわけですから,これらを投資に回すように仕向けるということです。そのためには,まずは規制緩和と金融緩和の推進が求められます。投資減税も大いに議論されるところです(アベノミクスにも謳われています)。

ただし,規制緩和の推進を拙速に進めては,危険な食品や商品で国民の安全が脅かされるかも知れません。規制緩和は部品の一つにすぎません。並行して,預貯金を預かる金融セクターのリスクテイクを促すのが次に重要です。本当は預貯金を保有する家計セクターや企業セクターが自らリスクテイクしてくれるのがいちばん健全なんですが,事前の策としてはこうなります。

金融緩和は家計セクターや企業セクターだけでなく金融セクターにも効く理屈ですが,金融セクターにはその専門性に期待して,もっとさまざまな形でリスクテイクを促してはどうでしょうか。いちばん効くのは8%の自己資本比率規制を緩和することだと思います。ただし,リーマンショック後のグローバル世論はむしろ規制強化の方向にあり,現実的には難しいかも知れません。ただし,金融機関の投資行動が景気の波を助長する(晴れたときに傘を貸し,雨が降ったら取り上げるという例え話が有名ですね)という弊害(プロシクリカリティと言います)は議論されており,金融規制の中でもっとうまくできると思われてはいます。

家計セクター・企業セクター・金融セクターにリスクマネーの供給を働きかけつつ,やはり公的セクターによるリスクマネーの供給は必要だと思います。これは公共工事に代表される,いわゆる財政政策とは異なり,かつての産業再生機構とかいまの産業革新機構といった,公的な投資ファンドの機能発揮をイメージしています。こうした取り組みは民業圧迫になる面が否定できないわけですが,民間のリスクマネー供給が活発化するまでのつなぎ的な役割は必要だと思います。

このように,官民がそれぞれリスクマネーの供給を増やす方向感が出てくれば,財・サービスへの需要が出てくるため,あとはうまく回り出すのを見守ることになります。ここで重要なのは,リスクマネーですから,必ず失敗があるということです。このため,失業給付とか再雇用支援といった側面支援の強化は欠かせません。最近問題になっている「社内失業」への対応も急務です。

ここまで書いてみて,あまり独創的な内容にならなかったのが残念ですが,いま考えていることを書き留めてみました。。おしまい。
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