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花巻東の千葉くんは悪くないが,大会本部も悪くない [理数系思いつき]

こんにちは。前橋育英の初出場初優勝で幕を閉じた今年の甲子園ですが,一つ話題になったこととして,準決勝で敗れた花巻東高校の二番打者,千葉くんの「カット打法」がありましたね。今日はこの話題を。

http://hochi.yomiuri.co.jp/baseball/hs/news/20130822-OHT1T00002.htm千葉くんの「カット打法」とは,YouTubeでも話題になっています。



新聞記事によれば,準々決勝の試合後に大会本部は花巻東に対し,高校野球特別規則の「バントの定義」について説明を行い,千葉くんの打ち方が「カット打法」に抵触するおそれがあるため,あの打法は今後スリーバント失敗と同じ扱いになるとの判断が示されたとのこと。

高校野球特別規則の該当条文はこれ↓

http://www.jhbf.or.jp/rule/specialrule/17.html

「17.バントの定義:バントとは、バットをスイングしないで、内野をゆるく転がるように意識的にミートした打球である。自分の好む投球を待つために、打者が意識的にファウルにするような、いわゆる“カット打法”は、そのときの打者の動作(バットをスイングしたか否か)により、審判員がバントと判断する場合もある。」

さて,皆さんはどう思われたでしょうか。本件の問題は何で,誰が悪いのでしょうか。

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ワタクシはまず,法治国家としての体裁を大事にしたいと思いますが,高校野球特別規則の該当条文は「カット打法」をバントと判断することについて,審判に広めの裁量権を与えていることが読み取れます。したがって,大会本部にはまったく落ち度はないと考えます。

「準々決勝までは認めていたのに準決勝から認めないというのは問題ではないか」という意見もわからないではありませんが,高校野球特別規則の主張は,個別の「カット打法」をバントと判断するかどうかについては類型化が難しいことを正直に認めたうえで,審判に広めの裁量権を与えていることが明らかです。

だから,花巻東に事前説明を行わずに準決勝から突然認めないことにしても何の問題もなかったわけですが,それではあんまりなので事前説明を行ったと考えれば,大会本部はむしろ誠実に対応したと言えるのではないでしょうか。

その上で,今回の千葉くんの打法が高校野球特別規則の条文に照らしてどうかということになります。「バットをスイングしないで、内野をゆるく転がるように意識的にミート」でないことは明らかなので,少なくともバントでありませんが,「自分の好む投球を待つために、打者が意識的にファウルにするような、いわゆる“カット打法”」であることも明らかではないでしょうか。

論外な意見として「意図的にファウルにする高度な技術だ」というのがありますが,高校野球特別規則が意図的なファウルを問題視している以上,(プロではともかく)高校野球では議論の余地はありません。

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と,例のヒネクレによって大会本部を応援してみましたが,だからといって千葉くんが悪いと言うつもりはまったくありません。なぜなら,高校野球特別規則の該当条文は「ザル法」である余地が極めて多いからです。

まず,バントの定義がまずい。「バットをスイングしないで、内野をゆるく転がるように意識的にミート」はもっとシンプルに「バットを十分スイングせずにミート」ではどうでしょうか。「内野をゆるく転がす意図はなかった」とか「ミートする意識はなかった」とかゴチャゴチャするのは避けたい。「十分スイングせずに」としたのは,ミートする直前にスイングを始めた場合もバントに含めるべきだと考えたからです。

上の変更により,「自分の好む投球を待つために、打者が意識的にファウルにするような、いわゆる“カット打法”は、そのときの打者の動作(バットをスイングしたか否か)により、審判員がバントと判断する場合もある。」は全削除できます。「カット打法」の定義が明確にできない以上,無理な記述はやめて「スイングの十分性」の解釈に議論を一本化するのが,法治国家としては適切だと考えます。

以上から,高校野球特別規則の該当条文は以下のように変更すべきだとワタクシは主張します。

「17.バントの定義:バントとは、バットを十分スイングせずにしないで、内野をゆるく転がるように意識的にミートした打球である。自分の好む投球を待つために、打者が意識的にファウルにするような、いわゆる“カット打法”は、そのときの打者の動作(バットをスイングしたか否か)により、審判員がバントと判断する場合もある。

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さて,ワタクシの主張が認められたとして,あらためて今回の千葉くんの打法について考えてみると,「バットを十分スイングせずにミート」に該当するかどうかはかなり微妙な気がします。始めは左右の手首が離れていますが,スイングを始動する際にはくっついており,スイングの回転角度も十分あるように思います。いわゆる「バスター」と同じではないでしょうか。

したがって,今回の千葉くんの打法をバントと判定するには,「バスター」もすべてバントと判定するしかないように思います。すなわち,ツーストライク後のバスターでファウルは三振扱いとすべきです。大会本部はここまで踏み込めば,高い評価が得られるように思います。

いずれにしても,「ザル法」に振り回された千葉くんは不幸な被害者であると言わざるを得ません。千葉くんの技術がすばらしいのは万人の認めるところですから,決してグレずに頑張ってもらいたいと思います。
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