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「行動経済学」は「経済学」なのか(後編) [理数系思いつき]

前回(↓)の続き

http://himakou.blog.so-net.ne.jp/2013-07-27

助手:博士,先日の「確実性効果」には致命的な欠陥があるということでしたが。。。

博士:その通りじゃ。実験には大いに問題があるのう。

助手:博士,もったいぶらないで早く教えてくださいよ。~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~

博士:選択肢A,Bをよくながめてみよう。きみ,選択肢Aの権利をただでもらうのでなく,対価を払って手に入れるとしたら,いくら払う?

選択肢A:確率100%で30万円もらえる

選択肢B:確率80%で40万円もらえるが,確率20%でまったくもらえない

助手:選択肢Aですか? 普通に考えれば30万円でしょうね。

博士:まあそうじゃろうな。それでは選択肢Bはどうじゃ?

助手:選択肢Bですか? 期待値は32万円(=40万円×80%)ですが,わたしは32万円も払う気がしませんね。とりあえず半値の16万円としておきます。

博士:なるほど,不確実性を嫌うのも合理的な選択じゃ,よしよし。それじゃあ次の選択肢Eにはいくら払うかね?

選択肢E:確率80%で30万円もらえるが,確率20%でまったくもらえない

助手:選択肢Eは選択肢Bの75%に相当しますから,12万円(=16万円×75%)としましょうか。

博士:(嬉しそうに)ほう,そうかね。選択肢AもEも当たった場合に30万円もらえることは変わらないのに,可能性が100%と80%の違いで30万円と12万円もの差をつけるのかね?

助手:あれ,それもそうですね。そうなると,選択肢Eには期待値どおり24万円(=30万円×80%)としたくなってしまいますね。

博士:それなら選択肢Bはどうじゃ?。

助手:やはり期待値どおり32万円(=40万円×80%)としたくなってしまいます。あれ,それだとAよりもBを選ばないといけなくなってしまいますね???

博士:(さらに嬉しそうに)そうじゃろう,そうじゃろう。つまり,今回の問題設定は,被験者にある種の錯誤を誘う作りになっている意味で,大いに問題があるのじゃ!

~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~

助手:博士,今回の問題設定に問題があるのは何となくわかりましたが,具体的に何がどう問題なのでしょうか?

博士:それは,「不確実性の源泉」に二種類あることをあらかじめ明確にしていないことじゃ。考えてもみたまえ,きみ。見ず知らずの他人から「選択肢AのBのどちらかを差し上げますがどちらかお選びください」と言われたら,きみはどう思う?

助手:変な人がいるものだと思いますが,善意にあふれた大富豪かなと期待しつつ,その人の気が変わらないうちにさっさと30万円確保しようと思いました。

博士:つまり,きみは相手のことを完全には信頼していないということじゃな? だったら,選択肢AだってBだって同様に信用できないはずなのに,なぜ選択肢Aだけを信用するのじゃ?

助手:それはそうですが,選択肢Aを選んだ場合には素直に30万円くれる人であっても,選択肢Bを選んでサイコロを振った結果を見たら,素直に40万円くれる気がなくなってしまう不安があって。。。

博士:他の人々も大方そんなところじゃろ。行動経済学者たちはこの実験に「相手が約束を誠実に履行することの不確実性」が混入してしまっていることがわかっているのじゃろうか? 勘違い認知バイアスでも確実性効果でもなく,経済学の問題ですらないということが。

助手:・・・。

博士:繰り返すが,わしは「行動経済学」そのものには賛同する立場じゃ。それだけに,実験に関してももう少し工夫してもらいたいとの苦言を呈しておきたい。。

<終わり>
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