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個人金融資産1600兆円は決して眠っていない件 [金融]

ずいぶん久しぶりの投稿になります。特段心境の変化があったというわけではないのですが,他に興味が散っていたために,何となく筆が遠のいていました。

今日のネタは,約1600兆円あるとされる我が国の個人金融資産について。~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~

我が国ではずいぶん前から「個人金融資産の多くが現金・預金として眠っている」といった主張があります。日銀の資金循環統計 http://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjexp.pdf によれば,2013年6月末における個人金融資産は1,590兆円あり,内訳は,現金・預金:54%,保険・年金:27%,株式:8%,投信:5%,債券:2%,・・・,という具合です。(ただし,負債が360兆円あるので,ネット資産は1,200兆円強となります。)

政府や有識者のかねてからの主張は,個人がもっと証券投資,とりわけ株式投資を行うことで企業への資本供給が円滑になり,ひいては経済成長に寄与するということのようです。要は「個人がもっとリスクをとれ」ということですが,しかししかし,ワタクシは早速ヒネクレます。

「だったら金融機関が代わりにリスクをとればよいではないか」

860兆円もある現金・預金は決して眠っているわけではなく,これらは金融機関の負債となっています。つまり,これらの個人資産は金融機関の資産運用という形で間接的に活用されることになります。つまり,金融機関がリスクをきちんと行っていれば,経済成長に寄与するはずです。

こういう視点で資金循環統計の金融機関の欄をながめてみます。2013年6月末における金融機関の金融資産は3,150兆円ありますが,このうち,民間向け貸出が900兆円,株式投資はわずか150兆円しかありません。残りは何かというと,国債等の公債が870兆円,公的金融機関向け貸出が290兆円,現金・預金が270兆円となっており,期待したようなリスクをとっている感じはしません。(もちろん,国債等にも金利リスクや格下げリスクがあるので,そういう意味でのリスクはとってはいるわけですが,経済成長に寄与する意味でのリスクテイクとは言えないでしょう。)

さて,個人の代わりに金融機関にもっとリスクをとってもらうにはどうすればよいでしょうか。ワタクシの考えはこうです。

「金融機関の負債・資本構成に働きかける」

以下,二つほどあげてみます。

(1)預金調達コストの引き上げを促す
金融機関が集める預金の調達コストがいまよりも高くなれば,金融機関の収支を均衡させるため,運用サイドでいまよりも多くのリスクをとる必要が出てくるでしょう。具体的には,預金保険の料率を高めることなどが考えられます。
金融機関は預金保険の料率の上昇に対して,運用サイドでリスクをとる代わりに,預金金利を引き下げて賄うことも考えられます。この場合は,個人にとって預金の魅力が薄れることで自然と株式投資に向かわせるといった効果も期待できます。

(2)個人に金融機関の株式投資を促す
結局個人に株を買えという話にはなってしまいますが,個人が金融機関の株式投資を増やせば,金融機関はリスクがとりやすくなります。この場合,金融機関は自分が調達した資本以上に株式投資を行うはず(=レバレッジ)なので,個人が企業の株式を直接買う場合の何分の一の規模で金融機関の株式を買うことで,同様の効果が期待できます。具体的には,金融機関の株式投資に関して優遇税制を設ける等が考えられます。
やや似た話で,バブル崩壊や住専危機で金融機関が危機に晒された際に公的資金注入(=一時国有化)が行われましたが,これは金融システム安定という目的で政府が金融機関の株式投資を行ったものであり,今回のようなケースで行っては政府の過剰介入となるため,望ましくありません。

いかがでしょうか。おしまい。
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