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これからの法人税収について [政治]

博士と助手の会話。

助手:博士,先日(2013/12/04)の日経新聞に法人税に関する記事が三つも載ってましたが,お読みになりましたか?

博士:おお,残念ながら今日の日経はワシが読む前に,飼っているヤギが食うてしもうたわい,わっはっは。

助手:わっはっはじゃありません。我々はこれまで,我が国の法人税収のあるべき姿について考えてきたじゃありませんか!博士:おお,そうじゃった,そうじゃった。キミ,悪いが日経の記事についてかいつまんで教えてくれんか?

助手:(勝ち誇ったように)しょうがありませんね,記事は以下の三つです。

① 自民党税制調査会は12/3の小委員会で,安部首相が求めていた法人実効税率の引き下げを「長期検討」とする方針を示した。検討が後退した感があるも,来年度は復興特別法人税の前倒し廃止がすでに決まっており,首相官邸は静観する姿勢。

② 政府・与党は,東京などの豊かな自治体に集まりがちな法人住民税(地方税)を,財政状態の厳しい地方自治体に再配分する方針を固めた。来年度からの消費税率上げの一部が地方税となるため,豊かな自治体の税収が増える見通しだが,これを交付税の形で再配分するもの。

③ 来日中のアイルランド首相は日経のインタビューに答え,先進国の中で飛びぬけて低い12.5%の法人税率を今後も維持し,海外企業の誘致を促す意向を表明した。アイルランドは2008年のリーマンショックで債務危機となったことでEU等から金融支援を受け,国家財政の健全化に努めてきたが,こうした中でも低い法人税は上げずにいた。

博士:ほう,偶然にしては面白いのう。①③は法人に課する税率をどうすべきかというもので,②は法人から徴収した税金の配分の問題じゃな。

助手:我々は,以前のブログ

http://himakou.blog.so-net.ne.jp/2012-02-27
http://himakou.blog.so-net.ne.jp/2012-03-02

において「法人税は税金の二重取りである」との主張を行ってきましたが,いまいちど原点に立ち返り,我々の主張を再発信すべきときではないでしょうか。

博士:そうじゃのう。機会を捉えて我々の過去の主張を見直してみるのもいいことじゃ。で,我々の主張は何じゃったかのう?

助手:博士,もうお忘れですか。主な論点は以下の二つです。

① 法人税は,法人の利益に比例して課税されるが,そもそも法人の利益は株主のものであり,すなわち法人税は株主が最終的に得るべき配当や売却益の原資に対する課税であるという意味で税金の二重取りであり,廃止するのが望ましい。

② 一方,法人住民税(および事業税)については,個人住民税と同様,行政サービスの対価であることから応益負担の考え方に立ち,収益や利益に無関係なルールで課税すべきである。例えば,従業員数や事業所の床面積等。

博士:おお,そうじゃった,そうじゃった。いま見ても正しい主張に思えるのう。

助手:そうですね。ただし,当時は地方自治体間の法人税収の配分までは議論が回りませんでした。

博士:そうか? ワシは漠然とじゃがそのことについても考えていたぞ。

助手:そうだったんですか? いったいどんな?

博士:難しく考えることはない。法人税収は利益に関係なく,行政サービスの対価に応じて応益負担すればよいわけだから,地方自治体の行政コストを個人住民分と法人住民分に分割し,法人分を一定のルールで割り振ればよいのではないか? そうすれば,自治体間の税収の再配分などという面倒な処理は不要になる。

助手:儲かっている企業からも赤字の企業からも一律に無関係に徴収するんですか? 確か「外形標準課税」というんでしたっけ?

博士:そうじゃ。例えば,従業員数とか事業所の土地面積や床面積に応じて徴収するというものじゃ。これは地方税法にも明記されておるやり方だし,実際に平成16年度から資本金1億円以上の法人に対して25%が外形標準課税となっておる。ただし,現行の外形標準課税は従業員数や事業所面積ではなく,利益に給与や支払利息等の費用を加えることで,事業規模を捉えようとしておるので,我々のアイディアとは異なるがの。

http://kotobank.jp/word/%E5%A4%96%E5%BD%A2%E6%A8%99%E6%BA%96%E8%AA%B2%E7%A8%8E#.E5.A4.96.E5.BD.A2.E6.A8.99.E6.BA.96.E8.AA.B2.E7.A8.8E

助手:ところで,企業誘致が進まない地方の貧しい自治体は立ち行かなくなるのではないでしょうか?

博士:企業から住民税がとれなければ,自動的に個人からとらざるを得まい。ただし,どの自治体にも地元企業が存在するじゃろうから,個人住民税の負担割合もおのずと上限があろう。

助手:そうかも知れませんが,企業誘致が進まない自治体はジリ貧状態から抜け出せないのではないでしょうか?

博士:そうは思わん。自治体にとっては,市民を増やすのも企業誘致を進めるのも税収増に寄与するが,両者のバランスをどうするかは各自治体のグランドデザインの問題ではないだろうか。例えば,交通インフラに見劣りがして企業誘致に適さない反面,自然には満ちあふれて市民生活の満足度が高い自治体があってもよいではないか。そういう自治体は個人住民税が相対的に高めであったとしても,合理的に説明がつく。その逆ももちろんあるじゃろう。要は自治体間の競争じゃ。

助手:なるほど,それはいいですね。でも,競争に敗れた自治体はどうすればよいのでしょうか?

博士:自治体の破たん処理スキームを整備しておくことに尽きる。思い起こせば,金融機関についても護送船団行政を止めて競争させることになったが,破たん処理スキームの整備は怠らなかった。破綻した金融機関は一時国有化された後に他の金融機関に合併させられるというわけじゃ。合併による大型化もそうじゃが,自治体の行く末は金融機関が数年前に辿った道のようにも思えるのう。

助手:そうかも知れません。自治体にも競争原理を導入されるわけですかあ。我が故郷は大丈夫だろうか・・・。

博士:(きりりと顔を引き締めて)少子高齢化で今後我が国の人口が減少することが明らかな中,コミュニティを一定程度集結するなど,コンパクトシティを志向していく流れは避けがたいじゃろう。厳しいようじゃが,へたな郷愁や同情心に引きずられて,わずかな高齢者しか住まないコミュニティのために社会インフラを維持し続けるのでは共倒れになってしまう。ただし,こうした発想は中央政府主導で行うとえてして失敗しやすい。そうではなく,自治体の独創性に委ねながら徐々に行っていくことが望ましい。

おしまい。
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