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運悪くインサイダー情報を入手してしまった人の不幸について [理数系思いつき]

こんにちは。最近FXネタばかりでしたが,久しぶりにそれ以外の話題を投稿してみたいと思います。職場で最近,インサイダー取引の研修を受ける機会がありましたが,そこで感じた不可解なルールについて。まず基本的な事実ですが,インサイダー取引(内部者取引とも言う)は金融商品取引法で禁止されています。平たく言えば,インサイダー(内部者)であるがゆえに知ってしまった情報(インサイダー情報)を利用して株式・社債等の取引で利益を得ることは犯罪だということです。ただし,その情報が公表されればインサイダー情報ではなくなるので,法的な制約なく取引ができるようになります。ここまではまったく問題ありませんね。

ここでポイントとなるのは,①インサイダーとはどこまでを指すか,②インサイダー情報の公表とは何を指すか,の二つです。

まず,インサイダーとはどこまでを指すかですが,役員や社員は当然ですがそれ以外にも,過去1年以内に役員や社員だった者や,これら会社関係者からインサイダー情報を伝えられた者(第一次情報受領者と言う)も含まれます。このため,例えば出入りの業者が会社関係者から聞いてしまった場合はほぼ間違いなく第一次情報受領者であり,または状況にもよりますが,喫茶店で会社関係者がしゃべっているのを偶然聞いてしまった場合でも聞いた側にインサイダー情報との認識があれば第一次情報受領者になってしまうそうです。

次に,インサイダー情報の公表とは何を指すかですが,①2つ以上の報道機関に公開してから 12 時間が経過する,②TDnetを用いた公衆縦覧,③有価証券報告書や臨時報告書などの公衆縦覧,のいずれかであるとされています。このため,会社のホームページで公表されただけでは公表には当たらない点に注意が必要です。

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そうなると,自分が意図せず第一次情報受領者になってしまうケースが生じますが,その人は会社のホームページで公表された段階では取引ができないことになります。何も知らない一般の人々は会社のホームページで公表された段階で取引ができるにもかかわらずです。これはおかしなルールとはいえないでしょうか?

そもそも,インサイダー取引が悪だとされているのは,情報の偏在を利用して取引相手を騙すことと同じことだと考えられるからだというのが通説であり,どのような経緯を経て情報の偏在が生じたかはあまり関係ないということのようです。しかし,取引相手を騙す目的で情報の偏在を生じさせる故意または過失がなかった場合には,おかまいなしとすべきではないでしょうか。

刑法第38条第1項には「罪を犯す意思がない行為は罰しない。ただし,法律に特別の規定がある場合はこの限りでない」とあり,また民法第709条には「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う」とあります。つまり,刑法や民法の世界では,故意も過失もなければ責任なしとなるわけです。金融商品取引法のインサイダー取引規制は厳しすぎるのではないでしょうか。おしまい。
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