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プライベートエクイティ投資について(備忘) [金融]

プライベートエクイティ投資の関連用語について備忘のために記事にしておきます。[1] プライベートエクイティとは何か
直訳すれば「『私的な』株式」となりますが,この場合の『私的な』は『取引所で取引されていない』とか『未公開の』と解するべきです。要は,上場企業を目指す一歩二歩手前の非上場企業の株式のこと。なお,プライベートエクイティは「PE」とよく略されます。

[2] PE投資とはどんなものか
非上場企業の株式に投資して経営権を握り,経営を上向かせて上場を目指すタイプの投資のこと。非上場企業の株式であっても他力本願的な値上がりを期待するのではなく(そもそも非上場なのでまともな値がつかない),積極的に経営に関与する点がポイントです。

[3] 非上場企業の株式が上場するとどんないいことがあるのか
知っている人には釈迦に説法ですが,ここは極めて重要なのであえて一項目にしておきます。非上場株と比較した上場株の最大のメリットは「市場実勢価格による売却が容易」であるということであり,このために上場株は,将来得られる企業収益の総和(本源的価値)に,何円か何十円か何百円かの「上場プレミアム」が乗った値段で取引されることになります。よく,中小企業の社長が株式上場を目標にしていますが,これは自分が手塩にかけた企業を一人前にしたいという気持ちだけでなく,株式上場によって「上場プレミアム」を手に入れたいという純経済的な理由もあるはずです。

[4] PE投資にはどんなジャンルがあるか
企業のどういう成長過程でエントリーするかによります。生まれたばかりの企業に投資するのは「ベンチャーキャピタル」と呼ばれます。また,ある程度時間の経った企業の経営権を取りにいくのは「バイアウト投資」と呼ばれます。バイアウト投資の中でも経営破綻企業を対象にしたものは「ディストレス投資」と呼ばれます。いずれも経営権を取りにいく点に変わりないので,広義ではすべてバイアウト投資といえるかも知れません。いずれにしても,対象企業の経営陣に任せずに自分がやった方がうまい経営ができるだろうという発想がすべての基本なので,エントリーポイントは自分の得意技が生かせるところに設定することになります。

[5] 企業経営の得意技がない場合にはPE投資をあきらめるべきか
いえ,違います。自らPE投資を手がける代わりに,「PEファンド」に投資するという手があります。債券ファンドとか株式ファンドとか商品ファンドとか,ファンド投資はいろいろありますが,PEという,極めて流動性・換金性の低い投資対象に関しては,ファンドマネジャーを雇うという選択肢がより現実的といえます。ただし,悪いファンドマネジャーやヘタクソなファンドマネジャーにだまされないように注意する点は言うまでもありません。

[6] PEファンドの形態はどうなっているか
次のサイト http://www.daishi-consul.co.jp/file/keiei/pdf/200911.pdf などにあるとおり,PEファンドの形態には,民法上の「任意組合」,商法上の「匿名組合」,LPS法上の「投資事業有限責任組合(LLP)」の三種類があります。ただし,PEファンドの投資家にはGP(無限責任組合員)とLP(有限責任組合員)の二種類があり,専門性を有しない多くの投資家はLPを志向しますが,任意組合では投資家全員がGP扱いとなってしまうため,PE投資にはあまり採用されません。匿名組合は投資家全員がLP扱いであり,LLPはGPとLPが並存できる仕組みです。

[7] 匿名組合とLLPのメリット・デメリットは何か
匿名組合はLP投資家の存在をお互いに知られたくない場合に採用され,LLPは他のLP投資家間のコミュニケーションを期待する場合に採用されます。このあたりはさまざまな事情が考えられますが,LP投資家がプロの機関投資家であるケースでは,お互いの投資スタンスをわかり合う方がよい場合が多く,LLPを採用するケースが多いようです。なお,ファンドへの課税については,http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%BF%E5%90%8D%E7%B5%84%E5%90%88 によれば,任意組合,匿名組合,LLPのいずれであっても法人格を有しないため課税されず,分配金が各出資者に届いた時点で損益として課税されることになります。

[8] PEファンドにおけるファンドマネジャーの位置づけは
任意組合では総会で選任された「業務執行組合員」,匿名組合では「営業者」,LLPではGPの位置づけで,それぞれ業務執行を行うことになります。経済産業省のサイト http://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/pdf/LPS_shikougainen.pdf によれば,LLPにおけるGPの位置づけはそれほど強いものではなく,LPの合意によるGPの解任はありえます。とはいえ,出資者の中で最も専門性の高いGPがファンドを実質的に支配しているとの疑念は大いにありうるところです。

[9] PEファンド投資と連結決算の関係は
上述したとおり,LLPにおけるGP(=ファンドマネジャー)はたとえ出資額が20%乃至50%に満たなくても,GP自身や親会社のリソースをPE投資に活用しているケースが少なくなく,会計上はファンドが子会社扱いになってしまうケースが起こりえます。例えば http://www.ikpi.co.jp/topics/ifrs/ifrs_file07.html には連結決算の関係でこうした議論があり, http://www.azsa.or.jp/b_info/letter/258/az52_258.pdf では子会社にならずにすむ条件を議論しています。

おしまい。
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