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不適切なリスクマネーの供給は逆効果だ(2013/02/03の続き) [金融]

こんばんは。1月下旬から何回かに分けてアベノミクスについて自説を展開していますが,久しぶりにこれをさらに深掘りしてみたいと思います。

前々々回→http://himakou.blog.so-net.ne.jp/2013-01-25
前々回→http://himakou.blog.so-net.ne.jp/2013-01-26
前回→http://himakou.blog.so-net.ne.jp/2013-02-03これまでの三回の記事でワタクシは以下のようなことを主張しました。

・名目GDPやインフレ率が上がっただけでは国民は景気浮揚の恩恵を得られない。両者の差である実質GDPをいかに高めていくかが重要であって,日銀を脅しながらの「脱デフレ」などという短絡的な発想は実質GDPを高めるための障害になりかねない。

・実質GDPは国民が消費を我慢して投資に回すことの対価(=ご褒美)にあたるので,実質GDPが身の丈を超えて一時的にでも高くなってしまうと,国民が消費を過度に我慢してご褒美に期待する傾向が高まり,持続的な経済成長につながらない。

・実質GDPの安定的な成長には,家計セクター・企業セクター・金融セクターといった民間セクターによるリスクマネーの供給を促進するのが極めて重要。民業圧迫にならないよう注意しつつ,公的セクターによるリスクマネー供給を「つなぎ」とすることもありうる。

さて,ワタクシはこのように,民間セクターあるいは公的セクターによるリスクマネー供給の必要性を主張してきました。しかし,ここでワタクシは自己否定とも言えるヒネクレた主張を行います。

「不適切なリスクマネーの供給は逆効果だ[がく~(落胆した顔)]

すなわち,いったんリスクマネーの供給を肯定しておきながら,供給先がまずくてはかえって国民を不幸にすると言いたいわけです。より正確に言えば,「不適切なリスクマネーの供給は国民を不幸にする」ということです。

せっかくの機会ですから,リスクマネー,すなわち投資に回すオカネとはどういうものかについて考えてみましょう。前々回で述べたとおり,家計セクターにとっては「いま消費するか,それとも消費を一定期間我慢して投資に回すか」という判断を常に行っているわけです。日頃こうした判断をほとんど意識しないのは,銀行預金という低リスクの投資手段があるからですが,集まりすぎた銀行預金をどう投資に回すか金融セクターが代わりに判断しているわけです。なお,登場しなかった企業セクターは「保有マネーを家計セクターに賃金として渡すか,それとも株主に配当や自社株買いとして渡すか,それとも投資に回すか」という判断を常に行っているわけです。

ここで重要なのは,「リスクマネーで何に投資するか」です。リスクマネーの供給先は,雇用創出の多寡ではなく,あくまで国民が必要だと思える産業であるべきではないかとワタクシは考えます。ワタクシが特に無駄な投資と考えるのは,

(1)最近,安倍政権が自民党らしく公共工事に前向きな姿勢を出している印象ですが,ニーズの低いハコモノ(地方空港が最たる例です)にいくら投資しても,一時的に建設業界の雇用を高めるにすぎず,後々のメンテナンス負荷だけが残ってしまいます。そんな無駄なハコモノのせいで地域の雇用が確保されるのは税金の無駄遣いに他なりません。「雇用さえ増えれば何でもあり」は誤りです。

(2)地上波デジタルとか4K・8Kといったテレビ関連の投資,これも無駄だなあと感じます。過度に精細な映像を期待していない人々まで巻き込んで,まだ使えるテレビを無理矢理買い替えさせるなんて。。。相互発信的な効用を訴えるのであれば,テレビにクレジットカード差し込んでテレビショッピングの決済ができるようにするとか,住基カード差し込んで確定申告できるようにするとか,ここまで目指すべきでしょう。くだらない視聴者参加番組のアンケートに使っても国益にはかないません。

(3)どう考えても多すぎる大学。国の助成金さえなければ好き勝手にやってもらっていいんですがねえ。教育資金の助成自体はあっても言いと思うので,橋本市長が言うように,教育バウチャーを子どもに配って大学間で奪い合う形にすれば,淘汰が進んで卒業生の質も上がるという効果が期待できます。

といったものでしょうか。こう腐すと「だったらおまえはどんな投資がいいと言うんだ」と言われそうですが,上の三つの例はいずれも,受益を望んでいない人々に負担を強いることが問題なわけですから,これを引っ繰り返せばよい投資になると思います。続きはまた。おしまい。
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